021 切削:5軸加工のメリット
1. 5軸加工の使いどころ
5軸加工機は、切削加工機械の中でも多面体や複雑形状を加工する際に活躍します。
素材の角度を自由に変える事が出来ますので、段取替えなしで複数の加工面を1回の段取で加工する事ができ、工程短縮が図れるというのが大きなメリットの1つですね。
参考記事: 5軸加工による工程短縮
ワークを好きな角度に傾けることができるもう1つのメリットは、良質な加工面を得られるという事です。
例えば下図のような部品を加工する事を考えてみましょう。
このようなV字状の壁のあるような部品を加工するとしたらどうでしょうか。
まずは通常のマシニングセンタ(3軸加工機)で加工する場合を想定してみましょう。
3軸加工機で加工する場合、上図のような状況になるはずですね。
まず、加工する範囲の中で最小のアールを確認し、それ以下の半径を持ったエンドミルを選定します。
次に、エンドミルの突出し量を決めるわけですが、これはホルダーとの干渉を避ける長さに設定しなければいけません。
この場合は、ギリギリで壁面とぶつからない突出し量にする必要があります。
以前ご紹介した通り、切削加工では刃物の直径(D)と突出し量(L)の関係に制約があります。
細長くいくらでも突出し量を大きくして良いわけではありません。
概ねL / D ≦ 5となるような範囲に収める必要があるのです。
これを超えると、エンドミルの振れが大きくなり、加工が安定しません。
加工後の表面がガサガサと荒れてしまったり、最悪の場合は加工中にエンドミルが折れてしまうなんてこともあります。
このような場合にも、5軸加工機の出番があります。
2. 傾けられるメリットとは
このような奥の深い部分を加工しなければいけない場合、5軸加工機で傾けられるとしたらどうでしょうか。
5軸加工機であれば、都合の良い角度に素材を傾けることで、上図のように突出し量を最小限にすることができますね。
突出し量が短いという事は、エンドミルの振れが少なく、良質な加工面が得られることになります。
更に突出し量が短いと、加工時の速度を速められる事になりますので、加工工数の短縮にもつながりますね。
また、エンドミルの特徴として、中心部分は回転速度がゼロとなり切削性能が落ちます。
ボールエンドミルの場合は、中心からある程度離れた部分で削ると効率が良いわけですが、5軸加工機であればそれが可能なわけですね。
そうすると、更に加工面の質が上がる事に繋がります。
突出し量が短くできる以外にも、このようなメリットがあるわけですね。
もちろん、3軸加工機でも上図のように傾けて加工する事も可能です。
そのためには、素材を固定して傾けられるような傾斜テーブルや、傾けた状態で素材を受けられるような治具を用意する必要があります。
この場合は、傾けた状態で原点出しを行う必要があり、精度の良い加工はなかなか難しいですね。
5軸加工機では、まず平行に置いた状態で原点設定をすれば、傾けたときの座標値は機械が計算してくれます。
今までは製造現場から「こんなの作れない!」と言われるような形状でも、5軸加工機であれば実現できるかもしれませんね。
このような5軸加工機のメリットを踏まえたうえで、是非設計の幅を広げていただければと思います。
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